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お伽草紙

おとぎぞうし

太宰治·現代

空襲下の防空壕で書かれた太宰流の昔話再話

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文学

この著作について

太宰治が1945年、空襲下の東京で防空壕に避難しながら書き継ぎ、同年10月に筑摩書房から公刊した短編集。「瘤取り」「浦島さん」「カチカチ山」「舌切雀」の四つの昔話を、太宰独自の視点で語り直した戦時下の傑作である。

【内容】

各編には、お伽話を娘に読み聞かせる父の姿を枠として、本文と父の私的な注釈とが巧みに混ざり合う。瘤取り爺の悲哀はコミュニケーションの失敗の物語として、浦島太郎は年齢と時間の寓話として、カチカチ山の狸は「悲しいほど恋する男性」として、舌切雀の爺は「他人の喜びを喜べる人」として描かれる。戦時中の暗く切迫した日々に、太宰は昔話を通じて逆に人間の普遍的な滑稽さと愛おしさを浮かび上がらせる。

【影響と意義】

太宰中期の到達点のひとつで、滑稽と哀愁を同居させる太宰文体の円熟を示す。空襲を受けながら書き続けた事実そのものが作家の表現力の強さを物語り、のちの「斜陽」「人間失格」への橋渡しとなった。

【なぜ今読むか】

誰もが知っている昔話が一人の作家の眼差しで完全に新しい物語に変わる読書体験を、短時間で得られる。暗い時代の笑いの底力を知る一冊である。

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