犯
『犯罪と刑罰について』
はんざいとけいばつについて
チェーザレ・ベッカリーア·近代
近代刑法の人道主義的基礎を据えた啓蒙期イタリアの古典
法政治
この著作について
ミラノの貴族で経済学者・法学者チェーザレ・ベッカリーア(1738〜1794)が1764年に匿名で刊行した『Dei delitti e delle pene』の邦訳。近代刑法学の出発点とされる啓蒙期の名著である。
【内容】
社会契約説に基礎を置きながら、刑罰は社会防衛の必要最小限にとどめるべきだと論じる。罪刑法定主義、刑罰の比例原則、迅速で確実な裁判、拷問の廃止、死刑の原則的廃止という、現代刑法の基本原則の多くを最初に体系的に提示した。とくに死刑廃止論は、人間の生命に対する国家の権限を社会契約から導き出せないという原理的批判として、世界で最も早い理論的根拠を与えたものである。100ページ程度の小冊子という簡潔さで、啓蒙文学の力を集約的に示している。
【影響と意義】
刊行直後から英訳・仏訳を通じてヨーロッパ全土とアメリカに広まり、ヴォルテールの注解付き版が出版されて啓蒙主義の旗印となった。エカチェリーナ二世の法令編纂、トスカーナ大公レオポルド2世による1786年の死刑廃止、フランス革命期の人権宣言、明治日本の刑法近代化、現代欧州の死刑廃止運動まで、世界中の刑事司法改革に直接の影響を与え続けてきた。
【なぜ今読むか】
刑罰の正当化根拠と限界を問い直すとき、原典の透明な論理に立ち返ることが今なお有効な思考訓練となる。