『マネジメント 課題・責任・実践』
まねじめんと かだい・せきにん・じっせん
ピーター・ドラッカー·現代
マネジメント学を体系的に総合したドラッカー中期の大著
この著作について
ピーター・F・ドラッカーが1973年にニューヨークで公刊した、マネジメントに関する総合的な体系書。『現代の経営』(1954)から約20年の経験を踏まえて、マネジメントの全体像を900ページ超の大著として書き下ろした、20世紀経営学の頂点とされる著作である。
【内容】
全3部10編からなり、「課題(tasks)」ではマネジメントの基本機能、「責任(responsibilities)」では社会に対するマネジャーの義務、「実践(practices)」ではマネジメントの具体的手法を論じる。事業、労働者、社会の三つを同時に満たす統合的マネジメント像を示し、マーケティングとイノベーションの優位、知識労働者の重要性、目標設定と自己統制、非営利組織と公的機関のマネジメント、取締役会と企業統治まで射程を広げる。
【影響と意義】
マネジメントを「独立した専門職」として完成させ、経営大学院・企業内研修・コンサルティングの教材の標準となった。日本では上田惇生による翻訳シリーズが広く流通し、ビジネス書の古典としての地位を確立した。
【なぜ今読むか】
抜粋版「マネジメント エッセンシャル版」が入門として最適。知識社会・サービス経済の時代に、「組織は何のために存在するか」を問い直す基本書として読み継がれている。
さらに深く
【内容のあらまし】
本書は三部十編からなる九百頁超の大著で、ドラッカーが二十年以上にわたるコンサルティング経験を踏まえて書き下ろした、マネジメントの総合的な見取り図である。冒頭で彼は、二十世紀最大の社会的発明はマネジメントという独立した機能と専門職の確立であると述べる。企業も病院も大学も政府機関も、もはや天才的個人の働きではなく、組織された知識労働者の体系的協働によって成果を上げる時代に入った。
第一部「課題」では、組織が果たすべき機能が論じられる。最初の核心命題は、企業の目的は顧客の創造であるというものだ。利益は目的ではなく結果であり、生存のための条件にすぎない。事業を定義する三つの問いがここで提示される。「われわれの事業は何か」「顧客は誰か」「顧客にとっての価値は何か」。続いて、マーケティングとイノベーションが企業の二つの基本機能として位置づけられる。製品を作ってから売るのではなく、顧客の現実から出発して何を作るかを決める。続く章では、目標による管理と自己統制、戦略計画、生産性、収益性、責任ある組織といった主題が並ぶ。
第二部「責任」では、マネジメントが社会に対して負う義務が論じられる。組織は社会のなかにあり、社会の資源を借りて活動している。したがって本業を通じて社会的責任を果たさねばならず、本業を犠牲にして善意の活動に走るのは責任の取り違えである。倫理の章では、マネジャーに固有の倫理は何かが問われる。聖職者の倫理でも一般市民の倫理でもなく、自らの判断と行動が他者の生に与える影響を引き受ける専門職としての倫理である。
第三部「実践」が本書の最も大きな部分を占める。マネジメントの仕事は意思決定、コミュニケーション、組織設計、人事である。意思決定の章では、根本問題の特定から代替案の検討、意思決定の実行までの段階が分析される。組織の章では、機能別組織、事業部制、システム型組織、シミュレートされた分権制が比較される。人の章では、知識労働者の生産性向上、後継者育成、トップマネジメントの仕事、取締役会の役割が論じられる。マルチナショナル企業、規制産業、非営利組織、政府機関といった多様な組織への応用も忘れられていない。最終章でドラッカーは、マネジメントが学べる学問であり、教えられる技能であると締めくくる。経営大学院、企業内研修、コンサルティング業界の標準教材としての地位は、本書の刊行以来揺らいでいない。
著者
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