虚
『虚数の情緒』
きょすうのじょうちょ
吉田武·現代
数学・物理・哲学を横断する異色の自習書
科学哲学
この著作について
数学者・吉田武が2000年に東海大学出版会から公刊した、1100ページを超える大部の自習書(副題「中学生からの全方位独学法」)。中学生にも読めるように書きつつ、数学・物理・哲学・歴史・詩を縦横に横断する、教科書・啓蒙書を超えた独特の著作である。
【内容】
虚数(複素数)を理解するという小さな主題から出発し、オイラーの等式 e^(iπ)+1=0 に至る数学的展開、三角関数から量子力学までの物理学、ピタゴラスから現代哲学までの思想史、万葉集から現代詩までの文学を、読者を全方位で刺激する構成で展開する。数式と論理、詩と哲学、歴史と科学が互いに照らし合う独自の教育スタイルは、他の類書を寄せ付けない強度を持つ。
【影響と意義】
若い独学者たちの間でカリスマ的人気を持ち、佐藤優・東浩紀《あずまひろき》らもその独自性を評価する。数学啓蒙書のジャンルを超えた、教養書の稀有な達成として、刊行20年を経てもロングセラーであり続けている。
【なぜ今読むか】
細分化された学問を再統合して、ひとりの人間のなかで知が形成される過程を体験できる、独学の最良の伴走者。AIが細切れの答えを即座に返す時代に、長く重い一冊を時間をかけて読む経験の価値を思い出させてくれる。