時
『時間は実在するか』
じかんは じつざいするか
入不二基義·現代
時間の哲学的問題を丁寧に論じた入不二基義の日本語名著
哲学
この著作について
日本を代表する分析哲学者・入不二基義《いりふじもとよし》が、時間という最も基礎的で難解な主題に正面から取り組んだ緊密な論考。
【内容】
本書の軸には、二十世紀初頭のマクタガートが提起した二つの時間の捉え方がある。過去・現在・未来という流れを含む「A系列」と、出来事を「より前/より後」という関係だけで並べる「B系列」である。マクタガートはA系列が矛盾を孕むことから時間の非実在を主張したが、入不二はこれを丁寧に追跡し直し、「流れる現在」と「動かない時系列」の双方に内在する困難を解きほぐしていく。さらに「今」の位置、可能世界論、因果の向き、記憶と予期といった論点が、短い節を積み重ねるスタイルで探究される。日常の素朴な時間感覚と物理学・論理学の厳密な道具立てを結びつける筆致が印象的である。
【影響と意義】
日本語で書かれた時間の形而上学の代表的著作として、分析哲学・時間論研究の入門と発展の双方を支えてきた。続編『現実性の問題』『あるようにあり、なるようになる』などとあわせて、著者の「現実の哲学」の基礎を形づくる位置にある。
【なぜ今読むか】
時間の不足と忙しさに追われる日々に、「時間は本当に流れているのか」と一度立ち止まる体験は、生活の体感を大きく揺らす。論理的にではあるが、どこか静かな瞑想のような読書になる書物である。