精
『精神病理学総論』
せいしんびょうりがくそうろん
カール・ヤスパース·近代
記述的・了解的方法を確立した精神医学の古典
哲学医学
この著作について
カール・ヤスパースが精神医学者として活動していた時代に著した記念碑的著作。1913年に Allgemeine Psychopathologie として初版が刊行され、版を重ねながら大幅に拡張された精神病理学の基礎文献である。
【内容】
精神症状を客観的に記述する方法と、患者の体験を内側から了解する方法を区別し、両者を体系的に組み合わせる枠組みを提示する。妄想・幻覚・自我意識の障害といった個別の症状群を精緻に分類しつつ、それらが患者の生きられた経験のなかでどう構造化されるかを問う。因果的説明と了解的把握の方法的二元性は、自然科学的精神医学と人間学的精神医学の架橋として後の議論を方向づけた。日本語訳は内村祐之《うちむらゆうし》・西丸四方・島崎敏樹・岡田敬蔵の共訳による岩波書店版(全三巻、1953-1956年)が定本である。
【影響と意義】
現代精神医学の方法論的基礎を築いた著作で、現象学的精神病理学の系譜の出発点に立つ。ハイデガー後のビンスヴァンガーやミンコフスキーの実存分析に直接的影響を与え、ヤスパース自身の哲学的人間学への展開の起点ともなった。
【なぜ今読むか】
生物学的精神医学が主流となった現代でも、患者を一人の人間として了解する方法の重要性は失われない。むしろAIによる診断支援が普及するほど、本書の問題意識は再評価されている。
著者
関連する哲学者と話してみる
