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真

『真面目が肝心』

まじめがかんじん

近代

仮の名と誠実さの逆説を戯画化したワイルド最後にして最高の喜劇

文学

この著作について

オスカー・ワイルドが1895年2月にロンドンで初演した三幕の社交喜劇。逮捕・投獄(同年4月)の直前に初演された彼の最後の劇作で、「警句劇」「理念劇」と呼ばれるワイルド演劇の頂点に立つ代表作である。

【内容】

紳士アルジャーノンは、都会と田舎の生活を使い分けるため「バンベリー」という架空の病人を発明して二重生活を送り、友人ジャックは田舎で真面目な後見人を務めながらロンドンでは弟「アーネスト(Ernest)」と名乗って放蕩する。恋の駆け引きの末、二人の婚約者グウェンドリンとセシリーは共に「アーネストという名の男と結婚したい」と宣言、混乱のすえ物語の最後で驚くべき身元の取り違えが明らかになる。表題の Earnest(真面目)と固有名詞 Ernest の掛詞が劇全体を支える。

【影響と意義】

英国喜劇の最高峰として以後の舞台・映画・翻案の不朽の原型となり、トム・ストッパードが1974年の舞台喜劇でこの劇を大きく取り込むなど、後の劇作にも影響を及ぼした。

【なぜ今読むか】

表と裏、本心と社交の使い分けが加速するSNS時代において、「誠実さとは何か」を優雅に笑い飛ばす古典として効き続ける。

どの訳で読むか

どちらもワイルドのほかの劇と一冊になっていて、『ウィンダミア卿夫人の扇』はどちらにも入っている。『サロメ』も合わせて読みたいなら新潮文庫の西村訳、ここに挙げた中でいちばん新しい訳や、版元が本邦初訳とうたう四幕の完全版で読みたいなら光文社古典新訳文庫の河合訳が合う。

  • 西村孝次訳新潮社・新潮文庫、2005年改版

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    新潮文庫の一冊に、『サロメ』『ウィンダミア卿夫人の扇』と合わせて入っている。この本での題は「まじめが肝心」。1953年に出た同じ文庫の戯曲集を2005年に改版した際に、新たに訳し加えられた。

  • 河合祥一郎訳光文社・光文社古典新訳文庫、2026年

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    この本での題は「まじめが肝心」で、『ウィンダミア卿夫人の扇』(この本では「レイディ・ウィンダミアの扇」)と一冊になっている。版元は、本邦初訳の「完全版四幕もの」を、ワイルド自身の加筆修正が見えるレイアウトで収めたと紹介している。訳者まえがき、解説、年譜、訳者あとがきが付く。電子書籍もある。

さらに深く

【内容のあらまし】

副題には「まじめな人々のための軽薄な喜劇」とある。筋は、上演で広く用いられる三幕版で追う。第一幕の舞台は、アルジャーノンのフラットだ。アルジャーノンが返さずにいる友人ジャックのシガレットケースには、小さなセシリーから親愛なるジャックおじさんへ、という献辞が刻まれていた。問い詰められたジャックは、町ではアーネスト、田舎ではジャックと名乗っていると白状する。ジャックはブラックネル夫人の娘グウェンドリンから、アーネストという名の人を愛するのがずっと理想だったと聞かされたうえで求婚し、承諾を得る。続く夫人の面接で両親がいないと答えると、片親をなくすのは不運と言えても、両方なくすのは不注意に見えると返される。ジャックは赤ん坊のとき、ヴィクトリア駅の手荷物預かり所で、取り違えて人に渡された手提げ鞄の中から見つかったのだった。夫人は、大事に育てた一人娘を手荷物預かり所に嫁がせ、小包と縁組みさせる気はないと言い捨てて去る。ジャックがグウェンドリンに教えた田舎の住所を、アルジャーノンはこっそり袖口に書きとめる。

第二幕は7月、薔薇の咲く田舎屋敷の庭。ジャックが後見するセシリーのもとへ、アルジャーノンがジャックの放蕩者の弟アーネストを名乗って現れる。そこへジャックが喪服姿で戻り、牧師チャジュブルと家庭教師に弟が死んだと告げる。アルジャーノンが求婚すると、セシリーは、会ったこともないアーネストと2月14日に婚約したことにしていたと答える。男二人はそれぞれ牧師に、アーネストの名での洗礼を頼む。一方、訪ねてきたグウェンドリンとセシリーは、どちらもアーネスト・ワージングと婚約しているのは自分だと言い張る。お茶の席でセシリーは、相手の紅茶を角砂糖で満たし、バターつきパンを頼まれたのにケーキを出す。そこへ現れた男二人の偽名が露見すると、女二人は姉妹と呼び合って抱き合う。

第三幕で、女二人は男たちを問いただす。セシリーはアルジャーノンの答えを信じないが、答えの見事さは変わらないと言い、グウェンドリンは、大事なことで肝心なのは誠実さでなく様式だと応じる。そこへ来たブラックネル夫人は、セシリーに13万ポンドの財産があると知ると態度を一変させ、甥アルジャーノンとの結婚を認める。後見人のジャックは同意を拒み、祖父の遺言でセシリーが成年になるのは35歳だと明かす。夫人に翻意を求められると、ジャックは、自分とグウェンドリンの結婚を認めれば、セシリーとアルジャーノンの結婚も喜んで許すと切り返す。行き詰まったところで、牧師がふと口にした家庭教師プリズム女史の名に、夫人がはっと反応する。ここから種明かしが始まる。

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