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方丈記

ほうじょうき

鴨長明·中世

日本における無常観の文学的結晶

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文学文化・宗教

この著作について

平安末から鎌倉初期の歌人・鴨長明が、京郊外の日野山に結んだ方丈の庵で書き綴った、日本三大随筆の一つとされる短い名著。

【内容】

冒頭の「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず」は日本文学でもっとも有名な一節である。続いて長明は、都で相次いだ五大災厄(安元の大火、治承の辻風、福原遷都、養和の飢饉、元暦の大地震)を具体的に記録する。そのうえで、下鴨神社の神官家に生まれながら世に出損ねた自身の経歴、出家と隠遁、方丈(約三メートル四方)の庵を組み立てる工夫、山中での琴・読書・散策の日々が穏やかに語られる。最後に、「庵を愛するは執着なり」という自省へ至り、万物の無常と執着からの解放を、静かな疑問のうちに閉じる。

【影響と意義】

『枕草子《まくらのそうし》』『徒然草《つれづれぐさ》』と並ぶ日本三大随筆の一つとされ、中世以降の隠者文学や俳諧の精神、漱石・啄木・梶井基次郎ら近代文学者にまで陰に陽に影響を与えた。震災と疫病を経験した二十世紀以降、災害文学の先駆としても再評価されている。

【なぜ今読むか】

大地震・豪雨・パンデミックが身近な現代にこそ、本書の記録的筆致と静かな省察は響く。住まいと暮らしを小さくすることで心をどう整えるかという、ミニマルライフの古典的先例としても味わえる。

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