茶
『茶の湯の歴史』
ちゃのゆの れきし
熊倉功夫·現代
村田珠光から千利休を経て近代に至るまでの茶の湯の歴史的展開を、一次資料に基づき丁寧に論じた茶道史の標準的研究書
哲学
この著作について
茶道史研究の第一人者・熊倉功夫《くまくらいさお》が、室町期から近現代までの茶の湯の歩みを一次資料に基づいて描いた茶道史研究の標準書。
【内容】
本書はまず、村田珠光《むらたじゅこう》による侘び《わび》茶の萌芽、武野紹鴎《たけのじょうおう》による洗練、千利休による完成という、安土桃山期までの成立過程を追う。続いて、古田織部《ふるたおりべ》・小堀遠州《こぼりえんしゅう》・金森宗和《かなもりそうわ》らによる大名茶の展開、江戸中期の家元制度の確立、明治維新後の茶道の危機と近代化、女性の茶道参加、戦後の国際化と茶会記・美術館文化までが順に描かれる。茶会記、往復書簡、道具、建築、料理の記録などの一次資料を豊富に用い、茶が政治・経済・宗教・美意識と絡み合いながら形を変えてきた姿が立ち上がる。
【影響と意義】
岡倉天心『茶の本』のような文明論、流派内部の伝書とも異なり、社会史・文化史としての茶道研究の水準を引き上げた点で画期的である。博物館展示、文化財指定、観光政策の議論にも基礎データとして参照され続けている。
【なぜ今読むか】
「侘び・さび」の一語で消費されがちな茶の湯を、政治と経済と美の交錯点として理解し直せる。茶道を嗜む人にも観光で触れるだけの人にも、日本文化の厚みを内側から確かめ直す道しるべとなる。