幸
『幸福な王子』
こうふくなおうじ
オスカー・ワイルド·近代
ワイルドの代表童話集にして自己犠牲と美の寓話
文学
この著作について
オスカー・ワイルドが1888年にロンドンで公刊した童話集『幸福な王子およびその他の物語』の表題作と、その続編にあたる1891年の『柘榴の家』を合わせた童話群の総称。ワイルドの唯美主義と社会批判が子ども向け物語の形で結晶した、作家の名を広く知らしめた作品群である。
【内容】
表題作では、金箔と宝石で覆われた美しい王子像が、南へ渡るのを遅らせる一羽のツバメとともに、町の貧しい人々に自分の飾りを少しずつ贈り与えていく。すべての美を失って鉛の心だけになった王子像と、零下の冬に力尽きた小さなツバメは、人間の目には無用なものとして処分されるが、神の目には「この町でもっとも貴い二つのもの」として拾い上げられる。続く「ナイチンゲールと薔薇」「わがままな大男」「忠実な友」「すてきな花火」なども、美と犠牲と愛のテーマを繰り返し変奏する。
【影響と意義】
ヴィクトリア朝の道徳物語の枠内にありながら、唯美主義と社会主義的共感を深く織り込んだ点で独自の地位を占める。日本でも大正期から広く訳され、小学校の読本や児童文学の古典として根づいた。
【なぜ今読むか】
短く美しい寓話のうちに、現代にも通じる富と貧困、犠牲と連帯のテーマが詰まっている。大人になって読み返すほど味わいが深まる。
著者
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