『市民論』
しみんろん
トマス・ホッブズ·近代
ホッブズの政治哲学書で最初に活字になったもの。亡命中に書かれ、自然状態を万人の万人に対する戦争と描いた
この著作について
亡命中のホッブズが1641年11月に書き上げ、翌1642年にパリで少部数がラテン語で印刷された。彼の政治哲学の著作として初めて活字になった本で、「万人の万人に対する戦争」を意味するラテン語の句も、この本で初めて現れた。
【内容】
献辞と序文に続く「自由」「命令権」「宗教」の三部、全18章からなる。1647年の改訂版で加えた序文で、ホッブズは、市民社会の外にある人間の状態、つまり自然状態が万人の万人に対する戦争にほかならないことをまず示すと述べる。第1部はその状態と契約に関する自然の法を論じ、自然法は神の法でもあるとする。第2部は国家の起源、最高権力の権利、民主制・貴族制・君主制とその比較、国家を内側から解体させる原因、法と犯罪を扱う。第3部は神による統治を論じ、天国へ入るために必要なことで終わる。
【影響と意義】
ホッブズは物体、人間、市民の三部からなる哲学の体系を構想しており、本書は体系の上では最後に来るはずの部分だった。序文によれば、内戦の迫るイングランドの情勢を前に、彼はこれを先に仕上げた。初版は非売品だったが、批判に応える注も加えたアムステルダムの改訂版で広く読まれ、1651年には英訳も出た。同じ年に出る『リヴァイアサン』の主題を先取りした本とされ、近代自然法思想の成立と展開、ホッブズ自身の政治思想の形成を知るうえで重要な意味をもつ。
【なぜ今読むか】
有名な一句がどんな議論の順序のなかに置かれているのかを、章立てに沿って確かめられる。自然状態から主権、国家の解体、宗教までが一冊に並び、人はなぜ権力に従うのか、その権力に何を委ねるのかという問いを、内戦が始まる前に書かれた形で考えられる。
著者
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