逆
『逆行』
ぎゃっこう
太宰治·現代
第一回芥川賞候補となった太宰初期の短編
哲学文学日本文学
この著作について
太宰治が1935年2月、雑誌『文藝』に発表した短編小説。同年第一回芥川賞の候補作に選ばれ、川端康成《かわばたやすなり》との応酬を含む選評論争を経て太宰の文壇登場のきっかけとなった、初期作家活動を象徴する一篇である。
【内容】
四つの掌編「蝶蝶」「盗賊」「決闘」「くろんぼ」からなる連作的構成をとり、老境から少年期へと時間を逆向きにたどる作りになっている。冒頭は死を間近にした老人の意識の混濁から始まり、壮年期の友情と裏切り、青年期の失恋と虚栄、最後に幼年期の遊戯と恥辱の場面に着地する。一篇ごとに語り手と語法が微妙に切り替わり、自意識過剰な笑い、自己劇化、虚栄と羞恥の入り混じった感情が、後年の太宰作品を予告する筆致で描かれる。
【影響と意義】
芥川賞選考で川端康成が「作者目下の生活に厭な雲ありて」と評した一件は、太宰の有名な反論「川端康成へ」を生み、戦前文壇のエピソードとして繰り返し語られてきた。短編集『晩年』に収められたことで、初期太宰の自己劇化の方法を見るうえで欠かせない位置を占める作品となった。
【なぜ今読むか】
人生を逆向きに辿るというシンプルな趣向のなかに、自意識と時間に関する太宰のテーマがすでに凝縮されている。短時間で読み通せる初期太宰の入門編としても良い。
著者
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