統
『統辞理論の諸相』
とうじりろんのしょそう
ノーム・チョムスキー·現代
標準理論を定式化したチョムスキー初期の記念碑
哲学
この著作について
ノーム・チョムスキーが1965年にMITで公刊した言語学書。『統辞構造』(1957)で始まった生成文法プロジェクトを全面的に書き直し、後に「標準理論(standard theory)」と呼ばれる枠組みを提示した、チョムスキー言語学の初期を代表する理論書である。
【内容】
全4章。冒頭で「言語能力(competence)」と「言語運用(performance)」を区別し、言語学の対象を理想化された母語話者の言語能力に定める。つぎに深層構造と表層構造、変形規則、意味解釈を統合した生成文法の形式体系を構築する。さらに語彙挿入、下位範疇化、選択制限といった統辞・意味の接合面を精密化し、当時支配的だった行動主義言語学と経験主義習得論への根本的な批判を展開する。
【影響と意義】
20世紀後半の言語学・認知科学の地形を一気に書き換え、以後の支配・束縛理論(1981)、ミニマリスト・プログラム(1995)への理論的出発点となった。言語獲得の生得説、普遍文法、心的モジュール論をめぐる論争の中心文献として現代まで参照され続ける。
【なぜ今読むか】
LLMと生得文法の対立が再燃する現代、人間言語能力の本性をめぐる古典的テーゼの原典を押さえる価値がある。専門性は高いが、序論だけでも現代言語哲学の見取り図が得られる。