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テ

『ティマイオス』

古代

デミウルゴスによる宇宙の生成を描いたプラトン後期の宇宙論対話篇

哲学

この著作について

プラトンが後期に執筆した宇宙論対話篇。ソクラテスではなくピタゴラス派のティマイオスを主要語り手とし、『国家』の続篇として物語の表面的導入を持ちつつ、神話的寓話の形式で宇宙の生成と構造を論じる記念碑的作品。

【内容】

デミウルゴスと呼ばれる制作神が、永遠のイデアを範型としてこの可視的宇宙を生み出す過程を物語る。宇宙の素材は四大元素として、さらにそれらは基本の正多面体(正四・正六・正八・正二十面体)から組み立てられるという幾何学的宇宙論が提示される。魂の三部構成、身体諸器官の機能、病気の起源、そして有名な「コーラー(場)」の概念が、創成神話の枠組みの中で展開される。時間は「永遠の動く似像」として定義され、天体運行と時間概念の結合が主題化される。

【影響と意義】

中世の西ヨーロッパでは長いあいだ、ほぼ唯一手に入るプラトンの対話篇として読まれ、西洋自然哲学・宇宙論・医学の基本的語彙を供給した。ラファエロの「アテネの学堂」でプラトンが手にしているのも本書である。ピタゴラス派の数理宇宙観が取り入れられている。

【なぜ今読むか】

宇宙の合理的設計への信憑は、現代物理学の美的前提にも繋がる古典的問い。

どの訳で読むか

手軽な文庫で、訳註と訳者解説つきで読みたいなら講談社学術文庫の土屋訳がよい。アトランティス伝説の続きまで一冊で読みたいなら、続編も収めた白澤社の岸見訳がある。岩波書店の全集版の種山訳は版元では品切れ(2026年10月時点)なので、図書館などで探すことになる。

  • 土屋睦廣訳講談社・講談社学術文庫、2024年

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    A6判・304頁の文庫で、本文のあとに訳註と訳者解説が付く。電子版もある。

  • 岸見一郎訳白澤社、2015年

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    四六判上製・224頁の単行本。アトランティス伝説を語る未完の続編の対話篇も、あわせて訳している。

  • 種山恭子訳岩波書店・プラトン全集第12巻、1975年

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    A5判・330頁の全集版。版元は全集全体を「正確にして明快な訳文と詳細にして周到な注解」をそなえたものと紹介している。版元では品切れ(2026年10月時点)。

さらに深く

【内容のあらまし】

対話は人数を数えるところから始まる。一人、二人、三人。昨日の客のうち四人目はどこかとソクラテスが問い、病気で来られないと答えが返る。ソクラテスは前日に語った理想の国の話を手短に振り返る。守護者は財産も妻子も共有にするという構想は『国家』の議論とよく重なるが、哲学者が統治するという肝心の点には触れない。そのうえで、言葉で描いただけの国が他国と戦う姿を聞きたいと望む。これに応えて、クリティアスが古い言い伝えを語りだす。

それはソロンがエジプトのサイスで神官たちから聞いた話だ。ひどく年老いた神官は「ソロンよ、ソロンよ、ギリシア人はいつまでも子どもだ。年老いたギリシア人などいない」と言う。火や水による破滅が繰り返され、生き残る者はそのたびに文字を失うからだという。神官は、遠い昔のアテナイが、大西洋から全ヨーロッパとアジアへ攻め寄せた勢力を食い止めたと語る。その勢力の拠点だった島アトランティスは、のちにただ一日と一夜のうちに海に沈んだ。クリティアスはソクラテスの描いた国をこの古代アテナイに重ねようと提案し、天文に最も通じたティマイオスが、まず宇宙の生まれから人間の誕生までを語ることになる。

ティマイオスは、常にあって生成しないものと、常に生成して決してあらぬものを分け、生成した世界について語れるのはありそうな物語までだと断る。そのうえで、作り手は善く、善いものには妬みがないから、万物ができるだけ自分に似ることを望んだと語りだす。

世界の魂は、同と異と存在を混ぜ合わせて作られる。その混ぜものを縦に二本に裂き、Xの字に重ねて輪に曲げる。時間は永遠の動く似像として天とともに作られ、太陽と月と惑星は時の数を区切り守るために置かれる。やがて話は人間の目へ及び、天の巡りを目にすることが数と時間の観念と、宇宙の本性を探る力をもたらし、そこから哲学が生まれたとティマイオスは言う。

語りの半ばで、彼は話を最初からやり直し、世界は必然と知性の混ざり合いから生まれたと言う。知性は必然を説得して、生まれるものの大部分を最善の方へ導いた。範型と写しに加えて、あらゆる生成を受けとめる乳母のような第三のものが持ち出され、それは夢見るように、まがいの推理でしか捉えられないとされる。続いて火、空気、水、土の形が二種類の三角形から組み立てられ、話は人間の体へ降りていく。終わり近くには、人間は地ではなく天に根をもつ植物だという一節もある。最後に、ほかの生き物が生き方に応じた生まれ変わりとして手短に語られ、この世界を感覚でとらえられる神、ただ一つ生まれた天と呼んで語りは閉じる。

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