『監視資本主義』
かんししほんしゅぎ
ショシャナ・ズボフ·現代
人間の経験が予測商品となる新しい資本主義の解剖
この著作について
ハーバード・ビジネススクール名誉教授ショシャナ・ズボフ(Shoshana Zuboff)が2019年に刊行した社会経済論の大著(原題『The Age of Surveillance Capitalism』)。Google・Facebook・Amazon・Microsoftなどのビッグテック企業が主導する新しい資本主義形態を包括的に解剖した、二十一世紀の名著である。
【内容】
監視資本主義とは、人間のあらゆる経験データ(行動履歴・位置・音声・感情・生体反応)を原材料として採掘し、それを予測商品に加工して行動先物市場で取引する経済様式である。広告主はもはや「誰に広告を見せるか」ではなく「誰を予測通りに行動させられるか」を買う。ズボフは、Googleが検索データから広告収益を得る仕組みを発見した2001〜2004年を監視資本主義の原点として克明に描き、続いて社会的説得・行動修正・リアリティ産業のアーキテクチャが構築されていく過程を丁寧に追う。民主主義・自己決定権・子供の未来への影響を扱う結論部では、19世紀の労働者が資本主義に直面したのと同等の歴史的選択が、21世紀の市民に突きつけられていると警告する。
【影響と意義】
本書はニック・スルニチェク『プラットフォーム資本主義』、ケイト・クロフォード『アトラス・オブ・AI』、ヨハネス・ヘッシュル『フィードバック経済』と並んで、デジタル資本主義論の必読基礎文献となった。EUのデジタル市場法・デジタルサービス法の政策議論にも間接的な影響を残している。
【なぜ今読むか】
AIチャットボット・推薦アルゴリズム・IoT家電が生活の微細を採掘する時代に、その経済様式を歴史的文脈に位置づける最良の地図として、本書は年ごとに読まれる意義を増している。