語
『語録』
ごろく
エピクテトス·古代
エピクテトスの哲学講義をまとめたストア哲学の実践的名著
哲学
この著作について
奴隷身分から出発しストア派最大の教師となったエピクテトスの講義録。弟子アッリアノスが師の教室での言葉を書きとめた、後期ストア哲学の核心を伝える書。
【内容】
冒頭で「我々の力の及ぶものと及ばないもの」という二分法が提示される。身体・財産・名声・他人の評価は意のままにならず、判断・衝動・欲求・忌避だけが自分に属する。この峻別《しゅんべつ》を繰り返し叩き込みつつ、病・追放・死にどう向き合うか、友情や公務とどう付き合うか、快楽や怒りをどう扱うかといった場面を、師と弟子の対話調で論じていく。抽象的な倫理学書ではなく、生の鍛錬として哲学を語る点に大きな特徴がある。
【影響と意義】
皇帝マルクス・アウレリウスの『自省録』に直接の影響を与え、中世から近世まで修道士・啓蒙思想家に読み継がれた。二十世紀以降は認知行動療法が「出来事そのものではなく、それへの解釈が感情を生む」という原理を本書から引き継ぎ、現代心理療法の遠い源流のひとつともみなされる。
【なぜ今読むか】
ニュースやSNSで他人の評価や世界の混乱に心が揺れ続ける日々にこそ、「自分の支配下にないものに苦しむのをやめる」という古代からの助言が静かに効いてくる。感情の乱高下に距離を取るための杖になる。


