自
『自由意志』
じゆういし
サム・ハリス·現代
決定論の立場から自由意志を錯覚と論じた挑発的な短編
哲学神経科学自由意志
この著作について
神経科学者・哲学者サム・ハリスが2012年に刊行した薄手の論考『Free Will』の邦訳である。「自由意志は錯覚である」と断言する徹底した決定論の立場から、わずか数十ページで道徳・刑事司法・自己同一性をめぐる根本問題を論じる。
【内容】
ハリスは、自分が次に思い浮かべる単語や次に行う動作の元となる脳活動が、意識的な決断より先に発生するという神経科学の知見をふまえ、「自分は本当に行為者なのか」を厳しく問い直す。リバタリアン的自由意志論と両立論をいずれも退け、「自由意志は錯覚であるばかりか、その錯覚すら錯覚である」という独自の二重否定を展開する。決定論を引き受けることが冷酷さや無責任を招くのではなく、むしろ憎しみや過剰な誇りから人を解放する治療的な効果を持つと論じる。
【影響と意義】
短くて読みやすい構成と挑発的な議論で、英語圏の自由意志論を一般読者に開いた一冊として広く読まれた。デネットの両立論との論争はオンライン公開の往復書簡として有名で、現代自由意志論の鏡像的構図を象徴する。
【なぜ今読むか】
脳科学・AI・遺伝情報が私たちの行動選択を説明する度合いが高まる現在、責任・賞罰・自己批判のあり方を根底から再考する出発点として、いまなお力を持つ。