大
『大唐西域記』
だいとうさいいきき
玄奘(述)・弁機(編)·古代
玄奘が629年から645年のインド・西域の旅で見聞した138国を、弟子の弁機がまとめた12巻の旅行記。
仏教歴史アジア
この著作について
唐の僧玄奘《げんじょう》が、629年から645年にかけてのインドと西域の旅で見聞したことを、弟子の弁機《べんき》がまとめた全12巻の旅行記である。646年に成立した。
【内容】
太宗の命を受けて編まれ、玄奘が歩いた順に、138の国の地理、風俗、産物、言語、伝承、仏教の事情を記す。巻1は往路の西域34国、巻2から巻11はインドの諸国、巻12は帰路の西域諸国にあてられ、ナーランダー寺のあるマガダ国には巻8と巻9の2巻を割く。百科事典によれば、138国のうち110国は玄奘が立ち寄った国で、28国は伝聞によるという。巻6の、釈迦が生まれた国の章では、誕生の地の無憂樹がすでに枯れていたことを記したうえで、生まれた菩薩が四方に七歩ずつ歩み、天上天下唯我独尊、これより後は生まれることが尽きた、と言ったという伝えを書き留めている。
【影響と意義】
7世紀のインドと中央アジアの歴史地理、仏教史、言語史を知る史料としてきわめて貴重とされる。19世紀以降、欧米や日本の学者がインドや中央アジアで考古学の調査を進めたときの指南書となり、探検家スタインは日常の手引きにしたという。ただし、玄奘が訪れていない国の伝聞が、直接得た知識と区別されずに書かれている点には注意が要る。三蔵法師が孫悟空らを供に天竺へ向かう明代の長編小説も、本書に刺激を受けて書かれたとされる。
【なぜ今読むか】
7世紀の旅人の目を通して、仏教が生まれた土地の当時の姿をたどることができる。釈迦の誕生の言葉も、誕生の地を記した章の中に、その場所にまつわる伝えとして記されており、名言がどこでどのように語り継がれていたかを知る手がかりになる。